「これは、やりたくない」を叶えるのがFIRE
私はFIREは、通常働くことが好きではない人が選択する生き方だと思っています。
理由は至極単純で、働くことが好き(?)ならば、社畜のまま働いて給料を貰っている方が遥かに人生の難易度は低いからです。
社畜のままなら、社保もありローンも組める。
貰った給料の中で生活できる収支であれば生活の破綻はあり得ませんし、年金もまぁそれなりに貰えるでしょう。
働くことに違和感がなければ無理にFIREする必要はありません。
何かしたいことがあってFIREする人も中には居るでしょうが、社畜のままでも24時間拘束されているわけでもありませんし、有給休暇もあるため「やりたいこと」とやらがあっても、社畜を辞めないとできないことかという点は疑問です。
FIREしたいという場合は、通勤が嫌とか職場の人間関係が嫌とか仕事内容が嫌といった「やりたくないこと」を回避するためにFIREを選択すると思っています。
FIREは逃げの一手です。
これについて批判的な意見を出すのは、大概の場合は経営者であまり参考にはなりません。
社畜生活も学生生活のように3年~6年で終わるなら、FIREせずにそのまま社畜をやりきると思いますが、何しろ社畜で居る期間は長いです。
長すぎると言って良いです。
大卒でも約半世紀の間社畜なのです。
そんなに長い間「やりたくないこと」に時間を割くのはシンドイので、FIREする判断をするのは、ごくごく自然です。
やりたいことをしているという人も居るかもしれませんが、その感覚の賞味期限は短いです。
私も20代くらいの時は仕事が面白いと錯覚する時期はありましたが、その感覚はそう長くは続きません。
約半世紀、そのあまりの長い時間は「これちょっと面白いんじゃね?」くらいの感覚を容易にかき消してしまうでしょう。
FIREは流行れば流行るほど曖昧になっていく
こんな感じで、最初はそれなりに違和感なくできていることでも時間の経過によって嫌になってくるので、FIREはどちらかと言えば中年に差し掛かってから考え始める人が多いのかなと思います。
最近は、その手の錯覚すらせずに20代からFIREを目指す人も多いように思います。
若い人がスグにでもFIREしたいと考えているからなのか、金銭的なハードルが低い様々な種類のFIREが存在するようになってしまい、FIRE自体がかなり曖昧な言葉になってしまいました。
サイドFIREも大分幅がある言葉で、ちょっとした副業で1日2~3時間働くといったものから、雇われでそこそこしっかり働くというパターンもあるなど、人によってかなり幅があるのもサイドFIREの特徴です。
FIREの定義の曖昧さは今さらですが、フルFIREやサイドFIREと比べて1つだけ異彩を放つFIREが1つあります。
それがコーストFIRE(Coast FIRE)です。
何だかんだと言っても、サイドFIREはフルタイムより短い時間しか働かないのですが、コーストFIREだけは違います。
今までどおり働くけどFIREしているという、FIREという言葉の曖昧さを象徴するようなFIREです。
FIREの異端児、それがコーストFIRE
コーストFIREがFIREの中でも異色なのは、コーストFIRE達成後も普通に働き続けることです。
FI(Financial Independence)もRE(Retire Early)もありません。
何なら定年まで社畜を続けちゃうのが、コーストFIREです。
何でそんな訳の分からない状態になるのかと言えば、コーストFIREの考え方が老後のための資産形成を目標にしたものだからです。
老後の資金を作り終わったら、それでコーストFIRE達成です。
しかも資産運用で増えることを前提にした種銭を貯め終わればOKというのがコーストFIREです。
例えば、40歳の時点で1,000万円の資産を持ち、それを年利4%で運用する場合、60歳の定年時には2,200万円ほどの資産になります。
これで老後2,000万円問題はクリアしていると考えるのがコーストFIREです。
普通のFIREやサイドFIREより更に達成のハードルが低いFIREということになります。
コーストFIREが破綻していると思う理由
コーストFIREの売りは、コーストFIRE達成後に貰う給料は全部生活費に充てることができ、老後のための貯蓄を続ける必要がないという点なんですが、これって破綻してると思うのは私だけでしょうか?
コーストFIRE達成後は、今まで貯蓄と投資に充てていた分のお金も全額生活費に使うってことですよね。
要するにコーストFIRE後は、達成前より生活水準が上がるってことになります。
それって、最初に考えていた老後の資産計画と差異が出てませんか。
例えば、40歳で手取り30万円で生活費20万円の社畜が、ゼロから毎月10万円コーストFIREのために貯蓄と投資をしていると仮定した場合、今の生活費で65歳で仕事を辞めてから90歳までの25年分の生活費は6,000万円になります。
厚生年金が65歳から15万円程度受給できると仮定した場合、この人は4,500万円は年金で賄えるので、1,500万円分の貯金があればOKと考えるでしょう。
そして40歳時点でコーストFIREに向けて動きだしたこの社畜、コーストFIRE達成までどれくらい時間がかかるのでしょう?
現実的な利回りで考えても11年で達成可能です。
51歳の時にはコーストFIREを達成します。
つまり51歳から65歳までは、貰った給料全額使う生活になるってことです。
コーストFIREの定義どおりなら、コーストFIRE達成後に貰った給料は全額使う生活をすると思うんですが、そうしたら当然今までより生活水準が上がるんじゃないですかね。
この例だと、毎月30万円使う暮らしになるのではないかということです。
毎月30万円使う場合の65歳から90歳までの生活費は9,000万円です。
半分年金で賄えても、コーストFIREを決めた当初の想定の1,500万円からすると、3,000万円足りません。
定年後は20万円で生活する生活にダウンサイジングできればいいんですけど、下手に生活水準を上げた生活を10年以上して、また元の生活に戻せるかは疑問です。
達成のハードルも通常のFIREに比べて遥かに低いので、結構いい加減にやっても簡単に達成できそうですし、「よし俺はコーストFIREした。残りの金は証券口座にある金以外全部使うぞ。」と無軌道に使って、定年後生活水準を下げられない人が続出しそうな気がします。
コメント
nekopnabeさん おはようございます。今日も暑くて嫌になっているはしQです。
コーストFIREって定義があるのですね。これはFIREにただ個人的な取り崩しのやり方を一定期間だけ派手な金遣いをするということなので、おそらくは高給取りが、コーストFIREを言い訳にし、贅沢をするための口実のような気がします。FIREの目的がこうした期間限定のぜいたくな生活でもよいとは思いますが、外したタガはもとには戻せないでしょう。結局は計画通りのリターンが得られずサイドFIREに落ち着くか、老後破綻しFIRE否定論者から「それ見たことか」といわれるのでしょう。破綻はしていないが破綻するのが目に見えているが当方の結論です。ではまた
はしQさん、コメントありがとうございます。
はしQさんクラスまで貯めてしまうとコーストFIREなんて考える必要ないですから知らんでも問題はないです。
イマイチ何のためにあるのか分からないんですが、定年までは働くつもりで、老後の不安を感じたくない人がやるFIRE?のようです。
仰るようにコーストFIREを達成した後、そのままFIREを目指すというパターンもあるでしょうね。
給料使い切る場合は破綻するし、コーストFIREからFIREを目指したらそれはそれでコーストFIREは破綻していると思います。